• 輿石信男

ゲーム会社が飲料ビジネス?中国ビジネスのダイナミズム


 

昨年後半のとある暑い日に上海のファミリーマートに行った際に、店頭の一番いい場所に写真のペットボトルが大量に置かれていた。日本のコンビニで、かつパッケージが日本っぽかったので、日本の飲料メーカーのものなのかなあと思わず引き寄せられた。特に日本で一時「桃の天然水」にはまっていた時期があるので、ついに中国にも来たのかなと淡い期待をいただきながら、近づいて行って、チラッと緑の方の絵が目に入った。遠くからはてっきりライムかと思っていたので、それが「きゅうり」とわかった瞬間、ああ、これは中国企業の製品だろうと思った。


 中国人は夏はとにかくよくきゅうりを食べる。普通に鞄に一人1本持ち歩いていたりし、私もよく社員に「食べますか?」と無造作に生きゅうりを渡されたことがある。どうやら、昔から中国では、暑い日にはきゅうりを食べろと言われているらしい。調べてみるときゅうりは水分を多く含み、栄養素も豊富で、体を冷やす効果があるらしいので、古来の知恵だろう。だからこそ、中国人にはキュウリドリンクはピンッと来る飲み物と言える。しかし、さすがに日本企業だとそこまで攻めたものは出せないだろう。

 気になって家に帰ってメーカーを調べてみたら、「元気森林」という名前の2016年に出来たばかりの会社だ。H Pをみると、このシリーズは他にマスカットやオレンジなど全部で5種類の味があるようだ。その他に大きく「燃」と入ったお茶や爽健美茶を思わせる、カロリーゼロ、カフェインフリーの「健美軽」茶、糖分ゼロ・低脂肪牛乳を使った「乳茶」というミルクティなどである。いずれも現代的な健康志向の飲料である。ネット上でもパッケージが日本製品ぽく(実際にカタカナで日本語が入ったりしている)、健康志向なので森林元気は日本の会社なのか?という疑問の声や、最初に出す商品を日本っぽくするのはまだしも、すベてを日本風に見せるのはいかがなものか、という批判もあるようだが、ある金融メディアによると設立わずか3年で、年間売上は8億元(約120億円)に達し、企業価値は40億元(600億円)になっているそうだ。成功の要因は、若者層の健康志向を捉えた、中国のメガ飲料企業が手をつけていない「シュガーフリー」分野を開拓したことと、ターゲットに合わせてネット(タオバオ、京東など)とコンビニをメインの流通に据えたことだ。さらにユニークなのは、I Tベンチャーのように事業資金を何ラウンドにもわたって、ベンチャーキャピタルやエンジェルから調達していることだ。巨大飲料企業に立ち向かう、飲料ベンチャーと言えよう。それもそのはずで、この会社のオーナーは、なんと北京智明星通科技股份有限公司というゲーム会社のC E Oだ。この会社はJ E T R Oの調査資料でも海外で成功した中国ゲーム会社の1社として紹介されており、2018年の営業収益は31億2000万元(約450億円)、前年比21.56%減、純利益は7億5500万元(約113億円)という優良企業だ。おそらく、ゲーム会社なので、従業員のほとんどは20代で、彼らが欲しい飲み物を作って販売して成功したということだろうが、中国ビジネスのダイナミズムを感じる事例である。

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