• 輿石信男

中国巨大市場に飲み込まれる世界の良品

上海の静安寺に行った帰りに、久しぶりに久光デパートに寄って店内をぶらぶらとしていると、チラッとある靴店の看板が目に入り、思わず足が止まった。どこかで見覚えのある海外ブランドのロゴがそこにあった。しばらく考えてハッと思い出した。それは「SCHUTZ」というブラジルのブランドである。日本にフェラガモを持ち込んで流行らせた実績のある日本のファッション商社の依頼で10年近く前に、バイヤーさんたちをブラジル視察にお連れして、ブラジルのほとんどの有名ブランドとのミーティングをセッティングしたことがあった。その最後の方に、当時年商800億円を超える南米最大の靴メーカーであるArezzo社のイケメン2代目社長との商談があった。そこは最大手なので、安いラインから超高級ラインまで多くのブランドがあり、その中で最も普及的なラインが「SCHUTZ」であった。しかし、日本の商社は結局高級なブーツのラインだけを選んで契約をしたが、先方は「SCHUTZ」を勧めていたのを思い出した。まさか、それが日本を飛び越えて、中国に来ているとは驚きであった。

日本でも楽天などでは売られているが、正規輸入しているところはなく、おそらくほとんどは並行輸入だと思う。どちらにしても、ブラジルのブランドにまで手を広げているとは、中国市場は巨大な胃袋を持っているようで、世界中のブランドが飲み込まれていくし、そのスピードが日本に比べて極端に早い。実は、その一端が垣間見えた時があった。中国で2番目に大きい通販サイトである京東(JD.com )はファッション系に非常に力を入れており、ブランド品の仕入れ責任者を知っていたので、日本の大手企業に頼まれて、あるブランド担当とのミーティングをセットしたことがあった。その時間調整をするのに、私と中国人の20代後半の美人女性責任者とはWechatでささっとやり取りをしてすぐに候補日時を出してもらったが、それを日本の40代後半の男性ブランド担当とメールでやり取りをしたところ、なかなか返事が来ず、日程が決まらず困ってしまったことがあった。日本のアパレル業界衰退の原因は、ファッションビジネス自体の問題ではなく、他にあるのではないかと思わざるを得なかった。


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